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『それからはスープのことばかり考えて暮らした』(吉田篤弘,暮らしの手帖社,2006.08.16)  [本]

この著者の作品を読むのは、これが初めて。
「暮らしの手帖」に連載されていただけあり、和やかな穏やかな雰囲気。
ある街のサンドイッチ屋さんを舞台に話は進み、これといった大きな事件は起きない。

でも、おもしろい。独特の空気感がある作品だった。
癒される、というのは通俗すぎて好きな表現ではないが、ほのぼのとした読後感が味わえる。
しばらく、ちょっと重点的にこの作家の作品を読んでみよう。

最後に、巻末の「名なしのスープの作り方」から引用。
  • 期待をしないこと。
  • どんなスープが出来上がるかは鍋しか知らない。
  • 鍋は偉い。尊敬の念をこめて洗い磨く。が、期待はほどほどに。
  • 磨いた鍋は空のまましばらく置く。すぐにつくり始めない。我慢をする。
  • 空の鍋に何か転がり込んでこないものかと、ほどほどの期待をする。
  • しかし、すべては鍋に任せる。すると、鍋がつくってくれる。
  • 冷蔵庫を覗き、たまたまそのときあったものを鍋に放り込む。
  • 何でもいいが、好物のじゃがいもは入れておきたい。
  • もちろん、じゃがいもでなくてもいい。これは外せないというものを何かひとつ。
  • 鍋に水を入れ、火をつけると、そのうち湯気がたつ。湯気もまた尊い。
  • 換気を忘れないこと。窓をあけて、ついでに外の様子を見る。
  • 晴れていようが、曇っていようが、雨だろうが、スープはどんな空にも合う。
  • それも偉い。
  • やがて、じゃがいもがくずれてとける。
  • じゃがいも以外の諸君も、そのうちとけ始める。
  • とけて、彼我の区別がつかなくなったら、それで完成。
  • 本当は完成などないが、まぁ、いいや。
  • 熱いうちに食す。
  • そして、冷めないうちに近所の誰それに。
  • あるいは、思い出される人たちに。面倒なら、思い出すだけでもいい。
  • これを、スープの冷めない距離という。
  • この距離を保つのが、なかなか難しい。
  • その訓練のためにスープをつくる──というのはタテマエ。
  • ここに書いたことはすべて忘れ、たたひとこと念じればいい。
  • とにかく、おいしい!


それからはスープのことばかり考えて暮らした

それからはスープのことばかり考えて暮らした

  • 作者: 吉田 篤弘
  • 出版社/メーカー: 暮しの手帖社
  • 発売日: 2006/08
  • メディア: 単行本

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

それからはスープのことばかり考えて暮らした (中公文庫)

  • 作者: 吉田 篤弘
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2009/09
  • メディア: 文庫



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