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『ホルモー六景』(万城目学,角川書店,2007.11.25) [本]

今度映画化されるらしい『鴨川ホルモー』の続編。
といっても、こちらは「六景」の名の通り、6篇からなる短編集。
どの短編も、本編もしくは別の短編とうまくリンクしており、万城目学の手腕の冴えが感じられる。
特に泣けたのは「長持の恋」。
過去からの返信があったところで、「あっ、ジャック・フィニィの『愛の手紙』の本歌取り!?」と気がついたが、ぐいぐいと読まされてしまった。
最後の「ありがとう、私を見つけてくれて」という台詞には、ロバート・ネイサンの影響も感じられるけれど、読ませるし、泣けるいい短編だった。

そういえば、主人公の珠美が働いているのが、『鹿男あをによし』での重要な舞台となる『狐のは』であることからも、万城目学の自作への愛着が感じられるとともに、芸の細かさが表れていて好感が持てる。
新作が早く読んでみたい。

そうそう、加えて書くと、主人公が安倍で、ライバルが芦屋なのは、安倍晴明と芦屋道満の関係を意識していることに、「同志社大学黄竜陣」を読んでいて、芦屋の名前が「満」であることを知って、今さらに気がついた。となると、早良京子は「早良親王」で、菅原会長は「菅原道真」を意識しているのだろうか?
となると、楠木ふみは「楠木正成」?
だから、軍略の天才なのか?
親友の高村は、ひょっとして「小野篁」?
……う~む、奥が深い。

それにしても、ジャック・フィニィやロバート・ネイサンを知っている人も少なくなったんだろうなぁ。
『愛の手紙』は名作過ぎて、いろんな映画やドラマに翻案され、本家がかすんでしまっているような……。
フィニイの『ゲイルズバーグの春を愛す』は、古典ですが、名作です。ぜひご一読を。


ホルモー六景

ホルモー六景

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 単行本




ゲイルズバーグの春を愛す  ハヤカワ文庫 FT 26

ゲイルズバーグの春を愛す ハヤカワ文庫 FT 26

  • 作者: ジャック・フィニイ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1980/11
  • メディア: 文庫



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