SSブログ

「舟越桂2010」展(熊本市現代美術館) [美術]

熊本市現代美術館(CAMK)で開催中(2月13日まで)の「舟越桂2010」展を観てきました。

美術館に着いたのが、12月11日(土)の12時過ぎ。
大きな看板が出ていて、期待が高まります。

IMG_3537_s.jpg

IMG_3538_s.jpg

まず、今回の主目的である舟越桂氏によるアーティスト・トークの会場となるホームギャラリーの下見。
比較的広い会場で、一安心。

講演開始まで2時間近くあるし、場所取りのために座っていなくても、まあなんとかなるだろう、という見込みの元、会場内をぐるっと一回り。
展示室は、1980年代、1990年代、2000年代と時代ごとに3つに分けられ、作品点数は多くなかったが、作風の変化がわかる、いい展示だった。
中でも、初めて見たのは、「風のある部屋」(1992年、株式会社西日本シティ銀行)と「もうひとりのスフィンクス」(2010年、エド・ブローガン氏蔵)。

13時過ぎに見終わったので、講演会の会場へ移動。
よく見ると、誰も座っていない席にも場所取りのために物が置かれていて、マナーの悪さに唖然。それでも何とか前よりの席を確保。
14時には、席は満席。周囲にもかなりの数の立ち見のお客さん。
きっと、主催者側も、こんなに聴講したい人が集まるとは思っていなかったんでしょうね。
すぐに、学芸員の紹介で、舟越桂氏が登場。
「昨夜、熊本で飲み過ぎてしまい、ひどい声で申し訳ない」という前置きで、講演は始まりました。

以下、メモから転載。
========================================

熊本に滞在するのは初めて。
でも、以前から、深いつながりがあった。一つは彫刻の素材として使っている楠が、熊本県の県木であること。九州からの材木を使っているということは認識していたが、それが熊本県産だとは知らなかった。
もう一つは、同時開催されている「光の絵画」展。父・舟越保武のダミアン神父の像が展示されていた。ダミアン神父とハンセン氏病とのつながりは、若いころ、父から聞かされていた。

自分の彫像の眼に使っている大理石は、父が使っていたもの。
固定方法は、仏像の玉眼の固定方法を真似している。内側を刳りぬいて、まぶたの部分は1ノミずつ削っていくという手法。
作品のタイトルは、見えているものを、もう一度、言葉にするのは止めにした。

彫刻にブリキを使ったことに論理性はない。
最初のデッサンにあったものを立体化したもので、もっともそれを表現するのに適した素材を使っている。
その素材が、一般的に彫刻に適しているとされているかどうかは関係なく、使っていいと判断できる性格をしている。

山ともう一つの顔。
もう一つの顔は、自分の中にいる自分と相反するものの表現。
山は、学生のころ造形大にタクシーで乗り合わせて行く途中で思いついた「あの山は俺の中に入る」という、自分でも驚く言葉に由来している。

スフィンクスは人に謎をかける。だからこそ、スフィンクスは人間をずっと見続けている。
なにも言わない。ただ、知っている。

潜在的には、作品を作り始めた初期のころから、スフィンクスとは出会っている。
ノヴァーリスの『青い花』の一節をよく覚えている。
「この世界を知るものとは、なんぞや?」
「自分自身を知るもの」
ここには、なにか大事なことが書かれている、と感じた。
彫刻をやっていこうと思ったが、そのころにはもう流行していなかった具象彫刻しかできないと思っていた。具象に進もうと思う後押しを「自分自身を知るもの」という言葉がしてくれた。
人間とはこうだ、ということは、世界とはこう成り立っている、ということに等しい。

彫像は、胴の内刳りをして、軽くすると同時に、ヒビを予防している。

「バッタを食べるスフィンクス」は、昔観た『事件』というドラマで見た場面に影響されている。
バッタを食べたことはないが、苦いような味がするに違いない。それを敢えて殺して、噛んで食べる。それは、スフィンクスが高いところで人の戦いを見ているときに感じる思いに似ているのではないか?

肩や背中から手が出ている作品が多い。
その手とは、アンテナとしての手。誰かと繋がる、助けを借りるための手。
そういうものとしてならいいのではないか、と思い、作品に取り入れている。

「見晴台のスフィンクス」は、「スフィンクスは自分たちの中にある。なら、自分をスフィンクスに入れてみよう」という思いで制作した。
「あるんだよ。でも見えない」という点から、秘仏や胎内仏も意識している。
自刻像を全部を入れてしまう(見えなくしてしまう)のはもったいないので、ああいった形で見えるようにした。
また、頭の中に収めるためのバランスから、キングコングのような体型になっている。ほんとうはあんなポーズにしたくはなかったのだが、後頭部に収めるという構造上の制限から、あのような体型にならざるを得なかった。
胴体に金箔を貼ったのは、金箔なしでは、将来、レントゲンで撮影してもなにも写らないだろう、という思いがあったから。

版画は、フィルムに描いた線がそのまま原画になる手法を用いている。手描きがそのまま版になる。
普段は夜から夜明けまで働く生活をしているが、版画のときは他の人も絡んでいるし、2週間のプロジェクトで予定した作品数を完成させないと関係者が困るため、ほんとうに別人のように働いている。

<楠を素材として選んだ理由について>
 函館で大きいレストランを経営している叔父の仲介で、トラピスト修道院の聖母を彫ることになった。
 父(舟越保武)に頼みたかったようなのだが、父は木彫をやっておらず、また、予算もなかった関係で、息子の、まだ無名の自分に白羽の矢が立った。
 2mを超える作品になるので、大学の教授に相談をしたところ、楠がいいんじゃないか、と薦められた。
 実際に彫ってみて、この材なら、僕はなんとかできる、と感じた。
 価格もヒノキより安く、硬さも中くらい。色も白すぎず、濃すぎず。匂いもいい。
 困るところは、木目がねじれているところ。彫る方向を頻繁に変える必要がある。

<作品を手放すときの気持ちについて>
 自分の作品であっても、手元を離れてしまうと、二度と見る機会のない作品は多い。
 どこにどの作品があるのかは、画廊を通じて知るだけで、コレクターの人と友達になる、ということも、あまりない。
 人の形をしたものなので、手放すのは辛い。どの作品とはいわないが、億万長者になったら、買い戻したい作品がいくつかある。
 最近は助手が小まめに掃除をしてくれるので、そういういことはなくなったが、以前、父の家の倉庫で制作をしていたときは、彫った木屑が床に溜まっていき、作品が完成して運び出されると、そこにポッカリと穴が空き、寂しかった。周囲の音は同じなのに、辺りが急に静かになったような気さえした。

<趣味について>
 若いころは身体を動かすことが好きだった。特にラグビー。
 趣味といえるものは、あまりない。映画は好き。いい年をして、テレビっ子でもある。
 スケートボードが好きで、若いころ、「妻の肖像」を完成させる前のころ、そのころ住んでいた府中の競馬場の駐車場でずっとやっていた。

<父、舟越保武について>
 影響されている。
 一生、父を超えられないだろうな、と思っている。他人の評価ではなく、自分(舟越桂)の感じる父のすごさを超えられないと思っている。
 学生のころ、「こういうものと出会ったから、彫刻の道を選んだ」という話をしたことがあった。
 そのとき、「(そういうきっかけが)俺にはない」と思い、わりとショックだった。
 少し後で、物心がつく以前に、そのきっかけに出会っていることに気がついた。
 それは、記憶にはないけれど、父という存在との大事な出会い。
 小3のころには、「彫刻家になっていくだろうなぁ」という遠い予想を抱いていた。
「スフィンクスの話」という作品の完成間近、「これを作るために、ずっと彫刻を作ってきたのかもしれない」と思った。

<美しいという言葉について>
 私は「美しい」という言葉を安易に使いすぎているのかもしれない。
 私が美しいと思うものは、何かが調和しているようなもの。それも盲腸があるような調和。余計なものがくっついた調和。
 例えば、すごく辛いものが含まれている映画でも、「美しい」と表現することはある。
 例えば、傷がないお茶碗と傷があっても、それ全体として美しいお茶碗。
 最近、奇異に見える作品も作り始めているのは、そういう思いがある。

<社会との関わりについて>
 削ぎ落とすことで、いつの時代にも通用する意匠というものがある。
 今の政府を批判しても、体制が変わるとその批判自体が古くなる。
 自分の作品には、服装なども、流行そのもの、その時代にだけ通用するようなものは取り入れないようにしている。

<表情について>
 少し外斜視気味にしているので、遠くを見ているようになっている。
 一番遠くにはなにがあるか?
 世界を知る=自分を知る、ならば、自分を見るのでもいいんじゃないか?
 固定した表情にしないように作ってきた。笑顔で作ると、それは広がりのない、それだけのものになってしまう。
 もっと長い間通用するものを作りたかった。

<彩色について>
 下地には、アクリル絵の具の白を濁らせたものを塗っている。
 それをサンドペーパーで削り落とす。木の色に助けられていると思う。
 肌色は、油絵の具を使っている。頬に赤みがほしいときは、絵の具が乾かないうちにパステルの粉を飛ばしている。
 胴体は、アクリル絵の具を使うことが多い。テカリを出したくないときは、石の粉を混ぜたりしている。伝統的な技法にはこだわりがないので、自由にやっている。
 寄せ木については、伝統的な技法を教えてもらっていないのが、マイナスになっている。
(質問者に対し)彫刻をやっているなら、なんでも使った方がいい。一生は短いから。

<仏像からの影響について>
 仏像からの影響は受けている。
 鎌倉時代の仏像には、自分の作品との近さを感じている。
 法隆寺の救世観音はすごいと思う。東大寺の広目天もすばらしく好き。
 運慶の俊乗上人(俊乗房重源)坐像には、人を表現することが世界を表現することにつながる、という念を抱いた。

========================================

質問が長引き、終わったのは予定の15時半を大きく回った16時過ぎ。
舟越氏は、少し休憩した後、サイン会にも応じてくれ、私も今回のカタログにサインをいただきました。
その後、展示会場をもう一度ぐるっと見て、戻ってくると、まだサイン会は続いていました。
講演だけでもお疲れでしょうに、よほどのサービス精神がないと、なかなかできないことだと思います。

美術館を出ると、もう17時過ぎ。
わざわざ熊本まで来た甲斐のあった、いい一日でした。


熊本市現代美術館
http://www.camk.or.jp/
「舟越桂2010」展
http://www.camk.or.jp/event/exhibition/funakoshi/



青い花 (岩波文庫)

青い花 (岩波文庫)

  • 作者: ノヴァーリス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989/08/16
  • メディア: 文庫

水のゆくえ―舟越桂作品集

水のゆくえ―舟越桂作品集

  • 作者: 舟越 桂
  • 出版社/メーカー: 青幻舎
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: ペーパーバック

舟越桂 夏の邸宅

舟越桂 夏の邸宅

  • 作者: 舟越 桂
  • 出版社/メーカー: 求龍堂
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 大型本

≒(ニアイコール)舟越桂 [DVD] (NEAR EQUAL FUNAKOSHI KATSURA)

≒(ニアイコール)舟越桂 [DVD] (NEAR EQUAL FUNAKOSHI KATSURA)

  • 出版社/メーカー: ビー・ビー・ビー株式会社
  • メディア: DVD

舟越桂 語りかけるまなざし [DVD]

舟越桂 語りかけるまなざし [DVD]

  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • メディア: DVD


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

瀬戸内国際芸術祭2010 - 小豆島 (2) 土と生命の図書館 [美術]

 香川県の直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、高松港周辺、岡山県の犬島を会場に、7月19日から10月31日まで開催されている「瀬戸内国際芸術祭2010」に行ってきました。
 直島や犬島は何度か足を運んだことがあったので、手始めに、あまり馴染みのない小豆島へ。

 岡山からのフェリーで土庄港に到着後、芸術祭線のバスで、肥土山・中山地区に移動。
 常盤橋前のバス停で降りてすぐ左手の倉庫(旧大鐸米倉庫)の中にある「心の巨人」を見終わった後、道路を隔てて向かいにある旧大鐸小学校へ向かいます。
 この廃校となった小学校の2階の図書館にある作品が、栗田宏一の「土と生命の図書館」。
 瀬戸内海の沿岸の随所で採取した土を採取した順番に和紙の上に並べた、という、その説明だけを聞くと、なんのことはない作品のように思われますが、その幾何学的なパターンというか、色彩の豊かさに圧倒されました。

IMG_3190.jpg

IMG_3192.jpg

 近寄ってみると、こんな感じ。
 ほんとうに和紙の上に土が載せられて(盛られて)いるだけです。

IMG_3193.jpg

 展示会場にいらしたガイドの方から聞いたお話によると、この作品は、その性質上、極端に風に弱い(飛ばされてしまう)ので、図書館を閉め切って、この作品だけは特別に空調をかけている、とのことでした。
 実際、小豆島にある他の作品は、例え屋内にある作品(つぎつぎきんつぎ)でも空調とは無縁でした。

IMG_3194.jpg

 図書館の黒板には、作者の栗田氏による解説が書かれていました。
 転記すると、次のとおり。

土と生命の図書館
  • 土は和紙のうえにのせてあるだけです。さわらないでね!
  • 瀬戸内海に面した土地、および瀬戸内海に流れ込むすべての河川の流域で採集した土です。兵庫県、岡山県、香川県、愛媛県、広島県、山口県、福岡県、大分県のおよそ350市町村で採集した600の土。
  • 採集した後、乾燥させ、根っこや葉っぱをピンセットでつまみ出しただけで、色をつけたりしていない自然のままの土です。
  • 田んぼや畑、ガケなどから片手にひとにぎりだけ採集します
  • 並べてある順番は、採集した順番のままです
  • どうして土を拾うのでしょうか? みなさんで考えてみましょう!

 それぞれは、なんの変哲もないように見えるタイル状に並べられた土が、全体で見ると、素晴らしいグラデーションとコントラストを作り出していました。
 なにより、そのグラデーションが作為的なものではなく、採取した順番で並べただけで構成されていることに驚かされ、しばらく見入ってしまいました。
 角度に寄って濃淡や色合いが変わりますので、足を運ばれる方は、ぜひゆっくりと、いろんな角度から堪能してみてください。飽きません。
 ……空調が効いていて、涼しいですし。(^_^;)

 この旧大鐸小学校には、他にも公式グッズを買えるコーナーもあり、また、中国系の作家の手になる作品も展示されていました。
 元は校長室らしい部屋の雰囲気を活かし、七夕の笹の代わりに壁面に貼られた小さい手袋の中に願い事などを書いた緑色の紙を差していく、という参加型の作品でした。

IMG_3188.jpg

Today's Tips
 芸術祭を効率的に回るなら、美術手帖2010年6月号増刊の『瀬戸内国際芸術祭2010 公式ガイドブック-アートをめぐる旅・完全ガイド』(1,260円)を事前に入手されておくことをオススメします。
 作品解説ばかりでなく、移動等に必要となる情報の全て(といっても過言ではない)が網羅されており、少なくとも小豆島に関するかぎり、公式ガイドブックに記されていない情報はない、と断言できるほどの完成度です。
 実際、鑑賞者の方以外にも、会場で案内をされている方(ボランティア・ガイドの方?)でも多くの方が持たれていて、無数のポストイットが貼り込まれ、使い込まれた趣になっている本の姿から、そのお役立ち度がうかがえました。

美術手帖6月号増刊 瀬戸内国際芸術祭2010公式ガイドブック

美術手帖6月号増刊 瀬戸内国際芸術祭2010公式ガイドブック

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2010/06/15
  • メディア: 雑誌

 第3回に続きます。

nice!(3)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

瀬戸内国際芸術祭2010 - 小豆島 (1) 心の巨人 [美術]

 香川県の直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、高松港周辺、岡山県の犬島を会場に、7月19日から10月31日まで開催されている「瀬戸内国際芸術祭2010」に行ってきました。
 直島や犬島は何度か足を運んだことがあったので、手始めに、あまり馴染みのない小豆島へ。

 岡山からのフェリーで土庄港に14時過ぎに到着後、開催期間中のみ運行されている芸術祭線のバスで、まず肥土山・中山地区を目指します。
 常盤橋前のバス停で下りると、すぐ目に入るのが芸術祭の空色の幟(のぼり)。
 この後も、ずっとこの幟が目印になってくれました。

IMG_3262.jpg

 バスを降りてすぐ左手の倉庫(旧大鐸米倉庫)の中にある作品が、河口龍夫の「心の巨人」。
 壁に取り付けられた銅線が大きな人型を形作っていました。
 なんだか不思議な存在感を感じるインスタレーションでした。

IMG_3181.jpg

IMG_3183.jpg

Today's Tips
芸術祭線のバスを利用するなら、1日フリー乗車券(700円、芸術祭線のみ乗り放題)を購入されるのが絶対にオススメです。(フェリー乗り場の他、車内でも購入できます)
バスの乗り降りがスムーズで、他のお客さんの邪魔にもなりませんし、なにしろ土庄港~常盤橋前(距離制で片道350円)を往復するだけで元が取れます。


 第2回(土と生命の図書館)に続きます。


nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

荒木経惟・舟越桂「至上ノ愛像」展(高橋コレクション日比谷)を観てきました [美術]

舟越桂と荒木経惟の二人の作品が同じ空間にある、という感覚を体験したくて、日比谷に開設されている「高橋コレクション日比谷」へ。

会場で手渡されたリーフレットの解説によると、「本展のタイトル『至上ノ愛像』は、舟越桂へのオマージュとして、荒木経惟によって名付けられた」とのこと。
ただ、会場を見た印象では、むしろ、荒木経惟の「母子像」のためのタイトルのように感じられました。

展示会場は、壁に飾られた荒木経惟の「母子像」の前に、舟越氏のスフィンクス像の中でも透徹した雰囲気の際立つ「遠い手のスフィンクス」と、舟越氏が「自分の中にある山」をテーマに作品を制作していたころの「言葉を聞く山」がひっそりと佇み、凛とした静謐さに満たされていました。

IMG_2944s.jpg

高橋コレクション日比谷については、次をご参照ください。
この高橋さんという方、収集されている作品の質から推察するに、かなり慧眼の方だとお見受けしました。

 高橋コレクションは、現代美術のコレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎が1997年より日本の若手作家を中心に収集してきた美術コレクションです。その1000点以上におよぶ所蔵作品を広く一般に公開し、多くの人と共有したいと、2004年4月に東京の神楽坂、2008年1月白金にアートスペース「高橋コレクション」を設置、コレクション作家の展覧会を開催してきました。
 2009年4月25日、三井不動産株式会社の協力を得て、新たに日比谷の地で活動をスタートし、2010年12月末までの期間、企画展を開催し、高橋コレクションの多彩で豊かな作品を多角的なテーマで展示、紹介してまいります。

高橋コレクション
http://www.takahashi-collection.com/


展示会場の余韻を楽しみながら、近くの三菱一号館のカフェ“Cafe 1894”でしばし休憩。
高い天井や重厚な板張りの床など、古い建築のよさを活かした優雅な雰囲気のお店でした。

IMG_2956s.jpg


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

没後400年・特別展「長谷川等伯」(東京国立博物館) [美術]

東京国立博物館で3月23日まで開催中の特別展「長谷川等伯」を観てきました。

上野駅に着いたのが、15時過ぎ。
金曜日とはいえ、平日の午後にも関わらず、予想以上の人並みで圧倒されます。
東京国立博物館の正門前に着くと、「50分待ちです」のプラカードを持った職員の方が入場整理を行っていました。
「阿修羅」展のときの経験から、この時間帯なら待っても20分だろうと多寡をくくっていたので怯みましたが、明日からの三連休になればさらに混むことは自明の理なので、腹をくくって入館することに。
平成館に近づくにつれ、見終わって帰ってくる人の量が半端ではないことに気付きましたが、とりあえず前進。

IMG_2926s.jpg
すでに遠くに見える、入館を待つ人混み

さすがに50分待ちだけあり、壮観と言いたくなるような人の量です。
晴れた3月半ばなので比較的楽ですが、これが暑かったり寒かったり雨だったりした日には、かなりの苦行でしょう。

IMG_2928s.jpg
びっしりと並ぶ人々。平日なので、平均年齢はかなり高め。

「50分待ち」とのことでしたが、本を読んだりメールを書いたりしていると、40分程度で入館できました。
途中、足の悪いご老人などは優先入場されていましたが、ご夫婦や介助者の方はともかく、7~8人の団体で足の悪い人がわずかに2人、というケースが見受けられたのには、「これだけ黙々と待っている人がいるのに……」と、ちょっと不公平感を感じました。

当たり前ですが、館内は人人人……。
とりあえず、1階の休憩所で少し休んでから、展示室を目指します。
史上最大にして最上の大回顧展、と豪語するだけあり、かなりの作品点数です。
一つひとつ鑑賞していくと疲れ果てるので、とりあえず「信春」時代のものはさらっと眺めるだけにして、まず、展示室内を一周し、じっくりと鑑賞するべき作品を下見していきます。
それでも、思わず足が止まったのは「仏涅槃図」
とんでもない大きさで、平成館の天井高をして、下側の5分の1くらいは床に垂れ下がる状態になっていました。画面下部中央に入滅した釈尊の姿。それを取り囲んで嘆き悲しむ弟子たちと動物たち。しっかりとしたタッチで描かれていて、圧倒されました。

2周目では、これと決めた作品だけに絞り込んで、じっくりと鑑賞していきます。
印象に残ったのは、「千利休像」「竹林猿猴図屏風」、そして今回の主役である「松林図屏風」
ですが、一番心に響いたのは、祥雲寺の障壁画として制作された金碧画様式の「楓図壁貼付」「萩芒図屏風」でした。
特に、京都の相国寺所蔵の「萩芒図屏風」は、初めて観る作品でしたが、そのモチーフの繰り返しに圧倒されました。
刺激的な美術に慣れているはずの現代人ですら圧倒されるんですから、桃山時代の人々の受けた衝撃たるや、如何ほどのものだったのでしょうか?

休憩しながらゆっくり観て歩いたので、見終わったのは17時過ぎ。
開館時間が20時まで延長されていたので、久しぶりに本館も見ることに。

今回、初めて気がついたのは、本館の所蔵品の場合、「写真撮影禁止」という表示のない展示物は撮影できるということでした。
当然、フラッシュは厳禁です。にも関わらず、発光させて注意されている人もいましたが……。

数枚、写真を撮りましたが、その中でも気になったのは、次の2点。

IMG_2933s.jpg
やたらと保存状態のよい不動明王像。朱色が鮮やかで美しく、造形も素晴らしい。

IMG_2935s.jpg
長曾根虎徹作の刀(打刀)の差裏に刻まれた金象嵌。「四胴」の文字が生々しい。

ちなみに、「四胴」とは、試し切りの用語で、「4つ重ねた状態の人の胴体を切断することができた」という意味です。
その試し切りをしたのが、68歳の山野加右衛門永久という試し切りの名手として知られる人だった、ということまでわかります。
「四胴」とか「三胴」といった言葉は、知識では知っていましたが、実際に銘として刻まれているのを目にしたのは初めてだし、その刀の実物を見たのも初めてで、感動しました。
さすが「虎徹」、というところなのでしょうか……。
「四胴」の文字が金象嵌で誇らしげに刻まれていることからしても、当時の武士にとっては、かなりの自慢の品だったんでしょうね。

本館の1階と2階、さらには地階のミュージアム・ショップまで堪能して、外に出ると、もう日が暮れていました。

IMG_2936s.jpg
夕闇に浮かぶ、ライトアップされた本館

ふと時計を見ると、19時半前。
5時間近く館内にいたことになります。
正門から外に出ると、プラカードは「20分待ち」になっていました。
日本の伝統的な美の世界を堪能した一日でした。(^_^)


東京国立博物館
http://www.tnm.go.jp/
没後400年・特別展「長谷川等伯」
http://www.tohaku400th.jp/



nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

“THE OUTLINE-見えていない輪郭”展(21_21 DESIGN SIGHT) [美術]

今回の東京行きで、特に見てみたかったのが、敬愛するプロダクト・デザイナーである深澤直人氏と広告写真の第一人者として知られる藤井保氏のコラボ企画展である“THE OUTLINE-見えていない輪郭”展。
会場は、六本木の東京ミッドタウンの敷地内にある“21_21 DESIGN SIGHT”です。

3481532

展示会場内に飾られた藤井氏の写真と、深澤氏のデザインしたアイテムが、不思議な緊張感を感じる空間を作り出していました。
ただ、「見えていない輪郭」というコンセプトからすると正しいのでしょうが、アイテムを照らす照明が輪郭を描き出すことに気を取られすぎて、そのアイテムそのものの細部は見えにくくなっていたのが、少し残念でした。

3481530

3481531
特徴のある外観が目をひく“21_21 DESIGN SIGHT”。安藤忠雄氏の設計です。

それから、展示されているアイテムのうち、入手可能なものは、会場で販売してくれるとよかったのに……、と、個人的には感じました。
いろいろと、大人の事情で難しいんですかね?


“THE OUTLINE-見えていない輪郭”展
会期: 2009.10.16 ~ 2010.1.31
開館: 11:00 ~ 20:00
http://www.2121designsight.jp/outline/


nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

根津美術館(南青山)に行ってきました。 [美術]

昨年(2009年)10月7日に新装開館したばかりの根津美術館に行ってきました。
表参道駅から、徒歩で10分足らず。
実は、今回は、展示そのものより建築が主目的の訪問です。

南青山に新しくお目見えしたこの根津美術館は、六本木ミッドタウンのサントリー美術館と同じく、隈研吾氏の設計。伝統的な雰囲気と現代性が調和したデザインで、展示されている品々と同様、美術品です。

特に印象に残っているのが、正門から美術館入口へのアプローチ。
床の石畳、進行方向右手に植えられた自然の竹、左手の壁に使われている竹材の三者による調和によって演出されている静謐感が見事です。

3472698
正門からのアプローチ(美術館側から撮影)

3472704
アプローチの壁面に使われている竹材。竹と竹の空間(隙間)が、いかにも隈研吾氏らしい。

3472701
美術館正面入口。外壁にはガラスが多用され、開放感のあるデザインとなっている。

展示を一通り見終わったところで、日本庭園へ。
冬だというのに緑濃い庭園は、2万㎡を越える広大さ、とのこと。
庭園中央の池の周囲には茶室が点在し、庭園の一番奥には「飛梅祠」(ひばいし)が設けられ、天神様(菅原道真公)が祀られていました。

3472700
緑の豊かな庭園には、小鳥の囀りが響いていました。

残念ながら、今回は、楽しみにしていた“NEZU CAFE”には、満席で入ることができませんでしたが、次回は、ゆっくりと時間を過ごせるといいなぁ、と感じました。
喧噪から離れて、落ち着いたひとときを過ごされたい方にはおすすめです。

そうそう、建築つながりですが、表参道駅から根津美術館に向かう道の途中に、こんなビルがありました。

IMG_2678.jpg

ご存じの方も多いのでしょうが、スイス出身の建築ユニットであるヘルツォーク&ド・ムーロン設計のプラダ・ブティックの青山店だそうです。
思わず目を奪われる独創的な建築ですが、周囲との調和という点から、表参道のTODSビルの方が個人的には好みかなぁ……?


根津美術館
〒107-0062
東京都港区南青山6-5-1
Tel. 03-3400-2536
http://www.nezu-muse.or.jp/




nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。