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『美の猟犬 安宅コレクション余聞』(伊藤郁太郎,日本経済新聞出版社,2007.10.18) [本]

『東洋経済』に紹介されていたので読んでみた本。
安宅英一氏のもとで、安宅コレクションの収集に携わり、その後、コレクションの収蔵先である大阪市立東洋陶磁美術館の館長に就任し、現在に至るという筆者による、コレクションと安宅氏に関する覚え書きのような本。
私は、今まできちんと安宅コレクションを観たことがないけれど、三井記念美術館で開催され、ちょうど観る機会のあった「安宅英一の眼 安宅コレクション・美の創造者」展を観ておけばよかったと、かなり後悔。

安宅氏はかなり癖の強い人物だったようだが、コレクションが東洋陶磁美術館に収蔵された後の筆者とのやりとりがとても印象的だった。
以下、引用。
 その時、ふと、それまで言いそびれていたことを口に出した。
「いろんな人から聞かれるんですけれど、安宅さんは、今、さぞお気落ちのことでしょうね、あれだけ打ち込んで来られたコレクションが、人手に渡ったんだからと、しばしば尋ねられます」
 すると安宅さんはその時に限って私の方を振り返り、不思議そうに「どうして?」
 私は思わず「どうしてって、多くの人がそう思っています」と答える。
 安宅さんは顔を前に戻して、つぶやくように、ごく当たり前のように答える。
「だってコレクションとは、誰が持っていても同じでしょう……?」

筆者は「しかしよく考えると、本物のコレクターの究極の境地とは、このようなものかもしれない、ということにやがて気付かされた。この一言だけに據っても、安宅さんが不世出のコレクターであったという証しとなるように思う」と書いているが、確かに、コレクターというものは、コレクターである以上、「誰が持っていても同じでしょう」とは言えないよなぁ。
とことん集めてしまうと、却って執着がなくなるものなのだろうか。

なお、題名の「美の猟犬」とは、安宅氏の命を受けて、美術品の収集に奔走する筆者自身のことを「猟犬」に例えたもの。てっきり「美の収集に猟犬のような執念を燃やす安宅英一」という意味かと思っていたので、少し意表を突かれた。


美の猟犬―安宅コレクション余聞

美の猟犬―安宅コレクション余聞

  • 作者: 伊藤 郁太郎
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 単行本



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