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『大江戸仙界紀』(石川英輔,講談社,1993.05.31) [本]

石川英輔の大江戸シリーズ(全7作)の第4作。
文政年間の江戸の正月が細かく書き込まれ、読み応えのある一冊だった。
熱海では、いな吉が現代に移動してくるというおまけつき。

最後の一節が、深く心に残った。
 私は、ふと思った。いな吉が、現代日本の社会を不思議な仙境と呼ぶのなら、文政年間のこの日本は何と呼ぶべきなのだろうか。
 -仙界-
 ぼんやり考えているうちに、そんな言葉が浮かんだ。仙境に対立する概念とはいえないが、仙境よりも広々してのどかな響きがあって、人間があまりのさばっていないこの時代にふさわしいような気がする。
 まだしばらくは仙界の熱海に滞在してから、箱根廻りで湯本、江ノ島、鎌倉、川崎大師などに寄りながら帰る予定にしているが、この分では、帰りは江戸まで一週間ぐらいかかりそうである。
 新幹線に乗れば狭い日本も、足で歩けば果てしなく広い仙界なのだ。 

たしかに広いだろうなぁ、歩けば。
少子化や経済力の低下の結果として、将来の日本も、江戸時代のような生活様式にゆっくりと回帰して行かざるを得ないのかもしれない。
その方が、人の生き方としては幸せな気もする。

このシリーズ(全7作)に関するレビューをまとめてみました。
よろしければ、ご覧ください。
  1. 『大江戸神仙伝』(石川英輔,評論社,1992.02.20)
  2. 『大江戸仙境録』(石川英輔,講談社,1986.11.05)
  3. 『大江戸遊仙記』(石川英輔,講談社,1990.12.05)
  4. 『大江戸仙界紀』(石川英輔,講談社,1993.05.31)
  5. 『大江戸仙女暦』(いな吉江戸暦)(石川英輔,講談社,1996.01.30)
  6. 『大江戸仙花暦』(石川英輔,講談社,1999.12.10)
  7. 『大江戸妖美伝』(石川英輔,講談社,2006.02.23)


大江戸仙界紀 (講談社文庫)

大江戸仙界紀 (講談社文庫)

  • 作者: 石川 英輔
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/08
  • メディア: 文庫


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