『大江戸仙女暦』(いな吉江戸暦)(石川英輔,講談社,1996.01.30) [本]
石川英輔の大江戸シリーズ(全7作)の第5作。
刊行当初の書名は『いな吉江戸暦』。
文庫化にあたり、これまでの作品との連続性を考えて<大江戸>と<仙>の寺を入れた方が読者にわかりやすいだろうという編集部の意向で改題されたとのこと。
主人公の速水洋介は、今回、1820年代のロンドンにも、文政年間の江戸と同じように転時してみた結果、次に江戸に転時したときは、今までより5年間ほど過去にずれてしまい、結果として、パラレル・ワールドと思われる江戸で暮らすことに。
どうやら作者は、少し過去に戻って、文政年間を見直したくなったようだ。
5年分だけ過去の江戸では、歌舞伎役者の団十郎と知り合うことになり、歌舞伎に関する描写などが書き込まれていく。
また、1820年代のロンドンと江戸を対比することで、現在までの変化で失ったものがよくわかった。
アレックス・カーの『美しき日本の残像』を読んでも思うことだが、明治、大正、昭和という大きな時代の変遷の中で、失ったものが多すぎて、切なくなる。
特に、白魚と「しろうお」が全く違うもの(「しろうお」はハゼ科の魚)で、白魚は人が飲めるぐらいきれいな水でなければ繁殖できないほど汚染に弱い魚で、現在の地球上にはあまり残っていない、という話には心を打たれた。
白魚を失った代償に、私たちはなにを得たのだろう……。
このシリーズ(全7作)に関するレビューをまとめてみました。
よろしければ、ご覧ください。
刊行当初の書名は『いな吉江戸暦』。
文庫化にあたり、これまでの作品との連続性を考えて<大江戸>と<仙>の寺を入れた方が読者にわかりやすいだろうという編集部の意向で改題されたとのこと。
主人公の速水洋介は、今回、1820年代のロンドンにも、文政年間の江戸と同じように転時してみた結果、次に江戸に転時したときは、今までより5年間ほど過去にずれてしまい、結果として、パラレル・ワールドと思われる江戸で暮らすことに。
どうやら作者は、少し過去に戻って、文政年間を見直したくなったようだ。
5年分だけ過去の江戸では、歌舞伎役者の団十郎と知り合うことになり、歌舞伎に関する描写などが書き込まれていく。
また、1820年代のロンドンと江戸を対比することで、現在までの変化で失ったものがよくわかった。
アレックス・カーの『美しき日本の残像』を読んでも思うことだが、明治、大正、昭和という大きな時代の変遷の中で、失ったものが多すぎて、切なくなる。
特に、白魚と「しろうお」が全く違うもの(「しろうお」はハゼ科の魚)で、白魚は人が飲めるぐらいきれいな水でなければ繁殖できないほど汚染に弱い魚で、現在の地球上にはあまり残っていない、という話には心を打たれた。
白魚を失った代償に、私たちはなにを得たのだろう……。
このシリーズ(全7作)に関するレビューをまとめてみました。
よろしければ、ご覧ください。
- 『大江戸神仙伝』(石川英輔,評論社,1992.02.20)
- 『大江戸仙境録』(石川英輔,講談社,1986.11.05)
- 『大江戸遊仙記』(石川英輔,講談社,1990.12.05)
- 『大江戸仙界紀』(石川英輔,講談社,1993.05.31)
- 『大江戸仙女暦』(いな吉江戸暦)(石川英輔,講談社,1996.01.30)
- 『大江戸仙花暦』(石川英輔,講談社,1999.12.10)
- 『大江戸妖美伝』(石川英輔,講談社,2006.02.23)
コメント 0